若年性パーキンソン病

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若年性パーキンソン病

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若年性パーキンソン病 とは? 原因・症状・治療法など

公開日
更新日

 
執筆:須賀 香穂里(ヘルスケアライター)
医療監修:株式会社とらうべ
 
 
若年性パーキンソン病 という病名を聞いたことがありますか? パーキンソン病については、聞いた事はあると思いますが、詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか?
 
パーキンソン病とは、簡単に言えば筋肉運動がうまくいかなくなる病気です。この病気は基本的には50歳以上で発症しますが、40歳以下で発症することもあります(2)。
 
このように40歳以下で発症したパーキンソン病は「 若年性パーキンソン病 」と呼ばれます。この記事では、まずパーキンソン病の概要について説明し、続いて「 若年性パーキンソン病 」の原因、治療法等について説明します。
 
 

目次

若年性パーキンソン病 :パーキンソン病とは

 
パーキンソン病は、19世紀の初めにパーキンソン病を最初に報告した英国のパーキンソン医師に因んでこの病名でよばれるようになりました。
パーキンソン病の患者は日本に現在約10万人いると推定されています。発症年齢は、50代、60代が多くなっています。前述したように40代以下で発症する人もいますし、70歳を超して発症する人も少なからず存在します。
 
 

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若年性パーキンソン病:パーキンソン病からくる症状:振戦(しんせん)

 
「振戦(しんせん)」は“ふるえ”を指す専門用語です。この病気の4つの運動症状の中でもっとも特徴的な症状で、患者の8割くらいの方に現れ、『典型的な左右差のある安静時の振戦』があれば診断基準を満たすことになります。
 
初発症状としてもっとも多く、じっとしている時に“ふるえ”はあらわれ、1秒間に5回くらいのゆっくりとしたもので「静止時振戦(せいしじしんせん)」と言われます。片方のふるえから始まり、他の部分へ進行していきます。
 
最初に起こった側の程度が強く現れ、症状の左右差は進行してからも変わらないことが多く、振戦で発症すると進行は遅い傾向にあるようです。腕や手、足、顎の順でよく現れ、特徴的なふるえは「丸薬をまるめるような振戦」(指をこすり合わせるように振える)で、他にもうなずくようにたてに振る「ヨシヨシ型」の振戦も見られることがあります。
 
振戦は安静時のみに起こることから、QOL(生活の質)には大きく影響せず、消失させることが治療の最優先目標となることは少なくなっています。しかし、生活上の支障が出ている患者さんが症状の消失を希望する場合には、治療の優先度が上がりますので、医師と相談してください。
 
パーキンソン病におこる「静止時振戦」とは別に「本態性振戦(ほんたいせいしんせん)」という疾患は“ふるえ”だけが症状の病気です。原因となる病気がないのに“ふるえ”だけがあり、“ふるえ”の速度は速くパーキンソン病とは区別されます。ちなみに、「本態性」とは医学用語で原因不明という意味です。
 
 

若年性パーキンソン病:パーキンソン病からくる症状:無動・寡動

 
パーキンソン病の初期に見られる運動症状として、無動・寡動は振戦に次いで多くみられます。おもに手足の動きが悪くなるものです。動きが遅くなり、立ったり座ったりがしづらくなります。
 
よくみられる症状として次のようなものがあります。
 

  • ・表情が乏しい(仮面様顔貌;かめんようがんぼう)
  • ・歩幅が小さくなる(小刻み歩行)
  • ・瞬きが少ない
  • ・小声になり、単調で抑揚のない話し方になる
  • ・字が下手になり、だんだん文字が小さくなる(小字症)
  • ・食事動作、洋服の着脱が難しくなる
  • ・食べ物を噛んだり、飲み込んだりすることが遅くなる、下手になる
  • ・寝返りがうてなくなる

 
病気が進行するにつれて、歩行はできても寝返りがうてなくなるというように、体幹の動きがいっそう阻害されます。そして、動作緩慢で発症すると進行が速い傾向にあります。
 
 

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若年性パーキンソン病:パーキンソン病からくる症状:筋強剛(きんきょうごう=筋固縮)

 
筋強剛は診察所見で、「筋肉のこわばり」のことを指します。患者さんの腕を曲げ伸ばししたとき、医師が腕に感じます。典型的な筋強剛は「歯車様」といわれていて、関節の曲げ伸ばしがカクカクと歯車が軋むような抵抗感が規則的に出ることが多くなります。
 
この、「カクカク」「カタカタ」は患者さん本人も感じていることがあります。歯車様の筋強剛は上肢で起こりやすく、下肢や首では「鉛管様」といわれ、他動的に関節の曲げ伸ばしをしようとすると連続的に抵抗を感じる症状です。ほかの病気と鑑別するためにも重要な所見のひとつとなります。
 
 

若年性パーキンソン病:パーキンソン病からくる症状:姿勢反射障害

 
進行期(数年たってから)に現れる症状で、初期にはでません。もしこの症状が2年以内に起こる時には、「進行性核上性麻痺」はじめ「パーキンソン症候群」を疑う必要があります。
 
姿勢反射障害は、無動とともに日常生活の大きな負担となります。特徴的な前かがみの姿勢になり、身体のバランスがとりにくくなって、ちょっと押されただけでもバタンと棒のように倒れてしまいます。
 
たとえば、ただ立っている時でさえ私たちの脳は無意識のうちにその姿勢を保つために関係する筋肉を調節しているのですが、パーキンソン病になるとこの調節に不具合が生じ、身体のバランスがうまくとれなくなるのです。姿勢反射が正常に働いていれば、押されても咄嗟にどちらかの足が前か後ろに出て、倒れないように身体を支えるはずなのですが、パーキンソン病では、前方または後方から上半身を押すと、そのままバタンと押された方向へ倒れてしまいます。
 
この咄嗟の反応(立直り反射という姿勢反射のひとつ)がパーキンソン病では阻害されています。姿勢反射の有無をみるためにpull testという検査を行うことがあります。
 
 

若年性パーキンソン病:パーキンソン病からくる症状:歩行障害・突進現象

 
パーキンソン病の姿勢の異常は特徴的で、前かがみでひざが軽く曲がった姿勢(前屈姿勢)で、歩行に影響します。歩き方の特徴は、歩幅の狭い「小刻み歩行」や「すり足」になり、振戦が片側に現れた初期の患者さんでは、麻痺のように引きずるような歩行がみられることがあります。
 
方向を転換する時に、足踏み状態になってしまう「多歩(たほ:何度もふみかえる」や、歩行時の手の振りが無くなってしまうこと、後ろへ下がることが難しくなることがあります。歩行速度は遅いのですが、前傾しているので段々と早くなってしまう「加速歩行(かそくほこう)」も見られます。ちょっと押されただけで、踏みとどまることができずに押された方向へどんどん突進していってしまう「突進現象」もよくみられます。
 
また、歩き出しの1歩がなかなか出せないという「すくみ足」は、パーキンソン病の主要な徴候として古くからよく知られていて、足底が接着剤で床にはりつけられたようになり、足が前に出なくなってしまう状態です。
 
歩き出し(立ち止まった後に歩き出すときも)、身体の向きを変える時、狭い場所を通る時、目標に近づいた時の順によくみられます。ですが不思議なことに、「床に歩幅に合わせた目印を置く」「メトロノームなどの音で歩行のリズムをとる」と、これらに合わせて歩くことが可能になるので、「パラドックス歩行」「逆説的歩行」と言われています。
 
また、階段などは比較的上手に上ることができます。「すくみ足」は進行した患者さんにみられ、転びやすさが骨折などの怪我につながる症状のため、解消しようと試みても治療が困難な症状です。治療を困難にしている要因は、薬に身体の抵抗があることが多いとされています。
 
 

若年性パーキンソン病:パーキンソン病からくる症状:嗅覚や嚥下(えんげ)の障害など

 
ニオイをかぎ分けにくくなる、「嗅覚(きゅうかく)」の障害は、パーキンソン病の他の症状よりも数年先行して起きることがあると言われています。本人より先に家族が嗅覚の低下に気づいている場合があり、そういった例では発症していることが多いようです。
 
また、嚥下運動(えんげうんどう:飲み込むこと)にも障害が現れます。食べ物は、飲みこむこと(嚥下運動)を通じて胃に送られるのですが、専門的には3つの期に分けて考えます。どの期にも障害はあらわれ、複数あることもあります。
 

  • ・口腔期(こうくうき):口腔から咽頭に食べ物が送り込まれる
    舌の運動、咀嚼(そしゃく:噛み砕くこと)の運動に障害があらわれる
  •  

  • ・咽頭期(いんとうき):咽頭から食道へ食べ物が運ばれる
    咽頭の運動に障害が現れて食べものが咽頭に残ってしまう、嚥下反射(えんげはんしゃ;気管に間違って入らないよう蓋をして食道へたべものを送り込む反射的な運動)が低下することによって、間違って唾液や食べものが気管に入る「誤嚥」が起きる
  •  

  • ・食道期(しょくどうき):食道から胃へと食べ物が運ばれる
    食道の括約筋(かつやくきん:逆流しないように弁の役割を果たす輪状の筋肉)の機能不全が起こる※

 
※編集部注:胃の中の胃酸が食道に逆流し、胸やけ、食べ物がつかえる感じなどの症状があらわれる逆流性食道炎については、「逆流性食道炎の薬 :症状の原因ごとに薬剤師が解説」もご覧いただけると幸いです。
 
 
これらの障害はパーキンソン病の方の約半数に発症して、重症になると出現する、というわけではなく初期からみられることもあります。本人としては、食べにくいという自覚が乏しいために、食べものや飲み物が気管に入ってしまってもむせることが無く、呼吸のための気管に液体や食べ物が入ってしまいます。
 
この誤嚥は肺炎につながり、パーキンソン病の患者さんの死因の約4割を肺炎が占めることからも、嚥下障害に対する治療やコントロールは、生活の質・寿命を左右する重要な要素となります。※
 
※編集部注:肺炎の原因について説明した肺炎原因.tokyoも参考にしてください。
 
 

若年性パーキンソン病:パーキンソン病からくる症状:自律神経症状

 
パーキンソン病では、身体の動きを調整する自律神経の機能も乱れてしまうので、自律神経症状もいろいろと現れます。※
 
※編集部注:
自律神経失調症のチェックについて詳しく説明した「自律神経失調症のチェック」
 
自律神経失調症の薬について詳しく説明した「自律神経失調症の薬」
もご一読いただけると幸いです。
 
とくに初期症状として便秘がよくみられることが分かっています。
その他、排尿障害(頻尿・排尿困難・尿失禁)、発汗障害、起立性低血圧(立ちくらみがする)、冷えや浮腫み、性機能の障害(インポテンツ)などの症状もあります。
 
パーキンソン病では早期から神経叢(しんけいそう:神経細胞の集団)に「レビー小体」という異常なたんぱく質のかたまりが現れることがわかっていて、蠕動運動は腸管※の壁の中にある神経叢によって調節されているため腸管※の運動障害、とくに蠕動運動の低下によって便秘になり、運動症状が出るよりも前の初期症状として重要度の高い症状として位置づけられています。
 
※編集部注:「腸管」(ちょうかん:小腸や大腸など)の機能は、以下の3つがあります。
 

  • 1.蠕動運動(ぜんどううんどう:腸の中の食べ物を運ぶ働き)
  • 2.蓄便(ちくべん:直腸や肛門でいったん便をためておく)
  • 3.排便(はいべん:便を出すこと)

 
パーキンソン病の患者さんでは、「排便回数の低下」「排便困難」が多くみられ、長引くと腸閉塞を起こす危険も。さらに便秘によって治療薬の吸収も悪くしてしまうため、便秘の改善は運動機能の改善につながると考えられます。
 
自律神経の障害は、排便の他に、排尿、発汗の障害、起立性低血圧が揃って見られたりすることもあります。
 
 

若年性パーキンソン病:パーキンソン病からくる症状:精神症状

 
幻覚やうつ状態などの精神症状は、パーキンソン病の非運動症状に数えられます。睡眠障害(不眠の訴え、昼間の過眠)も多い症状の1つです。※
 
※編集部注:睡眠障害の詳細については「睡眠障害」をご参照ください。
 
幻覚は本人に自覚のある場合は治療の必要はないのですが、幻覚に伴って妄想状態となるような場合には治療が必要になります。被害妄想(金銭を盗まれたと思い込む)や嫉妬妄想(パートナーが不倫していると思い込む)が多く、周囲に恐怖を感じさせる場合があります。
 
体調が悪い時、発熱や脱水が起こっているときほど、妄想状態は強くなってしまう傾向があるため要注意です。なお、パーキンソン病の治療薬の多くは精神症状に影響を及ぼすため、薬の減量で症状がおさまることも多いようですが、薬を減らしてしまうと運動症状が抑えられなくなるために、バランスをとることが非常に難しいといえます。
 
精神症状は病気の進行とともに、ドーパミンの減少がおこり意欲が低下、レビー小体(異常なたんぱく質のかたまり)が脳(前脳基底部や大脳皮質)に広がると認知機能障害や幻視が出現し、レビー小体型認知症あるいは認知症を伴うパーキンソン病と呼ばれる状態になります。
 
記銘力は維持されていても思考が遅くなってしまうため、考えがまとまらず決断が遅くなってしまいます。
 
初期では、夜中に怖い夢を見て大きな声を出すといった症状や、活発だった方が外出を控えたり、口数が少なくなったり、気分の落ち込み、意欲・自発性の低下、不眠といったうつ傾向が診断の手掛かりにされています。
 
 

認知症との関係

 
パーキンソン病の方の3~4割くらいの方に認知症が見られると言われています。また、診断がついてから10年以上が経過すると60%くらいの方に、20年以上では80%くらいの方に認知症の症状があるという研究結果もあります。
高齢者の場合には、「脳血管性認知症」「アルツハイマー型認知症」も含まれ、パーキンソン病が原因でない場合もありますが、「認知症を伴うパーキンソン病」という診断名がつきます。
 
 

パーキンソン病の合併症

 
死因となる合併症には、パーキンソン病からの症状や状態にリンクしている合併症と、とくに関連していない合併症(おもに高齢者に多い)があります。
 

  • ・「肺炎」…嚥下の障害からくる、誤嚥性肺炎が特徴
  • ・「骨折」…姿勢反射障害による転倒など
  • ・「窒息」…自律神経障害によって食後に低血圧が起こり失神することがあり、その際食べ物による窒息が起こり得る
  • ・「悪性症候群(あくせいしょうこうぐん)」…発熱・意識障害・筋硬直(きんこうちょく)を症状とするもの。進行期に、発汗や体温調整の障害がおこることによって引き起こされる
  • ・「腸閉塞(ちょうへいそく)」…便秘がひどくなって長期間続くことで発症。強い腹痛と嘔吐を伴う
  • ・「その他」…悪性腫瘍、心臓病、脳血管障害が、一般の死因と同じく多い

 
 

パーキンソン病の原因に関係する脳のしくみとは?

 
脳内の黒質細胞で作られるドーパミンの量が少なくなることで症状が現れるパーキンソン病。その原因を理解するためにも、まずは、関係している脳のメカニズムをみていきましょう。
 
脳の神経細胞には樹状突起と軸索があり、その末端には神経細胞同士が情報のやりとりをするためのシナプスがあります。
シナプスでは、神経伝達物質が放出され、隣り合った神経細胞受容体で受け取られることによって、情報が伝わるようになっています。身体全体の働きや生命の維持は、こういった情報伝達によって行われているのです。
 
神経伝達物質といえば、アセチルコリンやアドレナリン、ドーパミン、セロトニンといった名前を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか?
 
これらは、アミン類とよばれるもので、その中でもドーパミンは、カテコラミンと呼ばれる種類にあたり、黒質線条体路・中脳辺縁系路・中脳皮質路の3つの神経経路で働いています。このうち、パーキンソン病と大きくかかわっていることが分かっているのは、黒質線条体路で働くドーパミンの減少です。
 
 

パーキンソン病とドーパミンの関係

 
では、ドーパミンの減少がどのように関わっているのか、もう少し詳しくみていきましょう。
 
黒質は脳幹に属する中脳にあり、線条体は大脳の大脳基底核にありますが、ドーパミンが減少すると、黒質から線条体に情報がうまく伝達できなくなってしまいます。その結果、さまざまなパーキンソン病の症状が現れます。また、ドーパミン以外の神経伝達物質とのバランスが崩れることも影響しているようです。
 
黒質で作られるドーパミンの量が低下(正常な人と比べて20%以下)すると、症状が現れるとされていますが、人は年をとると10年で10%はその量が減少するといわれています。
 
高齢者に多い特徴として、背中が曲がった姿勢やバランス感覚が悪くなるなどがありますが、これらもドーパミンの減少と関連があるとも考えられています。神経細胞は年とともに減るわけですが、パーキンソン病を発症していると、より早く減ってしまいます。ただ、その理由は分かっていません。
 
 

パーキンソン病は遺伝する?

 
家族性(遺伝性)のものと、そうではない孤発性のものがあります。
家族性のものは5~10%程度とされていて、40歳以前に発症する若年性パーキンソン病に多くみられますが、全体の大半を占めるのは、高齢になって発症する孤発性のものです。日本人では、遺伝子変異を両親ともにもっている場合には遺伝も考えられるものの、可能性は低いでしょう。
 
 

パーキンソン病の検査と診断

 
発症が疑われた場合、同様の症状が出る病気ではないことを確認する必要があります。脳梗塞や脳腫瘍、ほかの脳疾患、別の病気の治療薬の副作用などでも、同様の症状がでることがあり、パーキンソン症候群と呼び区別しています。
 
血液検査、髄液検査、脳の画像診断CTやMRIなど、必要に応じて検査を行いますが、区別が難しい場合もあり、神経内科などの専門機関で相談して診断してもらうことをおすすめします。
 
 

パーキンソン病の治療方法

 
治療はおもに次のような方法があります。
 

内服治療

治療で最も重要なのは、不足しているドーパミンを補うための抗パーキンソン薬の内服治療です。なかでも、レボドパ製剤は効果的なため、現在も治療の中心として使われている薬です。
 
これは、脳内でドーパミンに変わり、不足しているドーパミンを補充する仕組みになっています。
 
レボドパは体内で分解されやすいため、単剤ではなく、分解されにくいようにほかの薬を配合したレボドパ配合剤が用いられることが多いです。長期使用したり、「ウェアリングオフ」といわれる血中濃度の変化することで、効果が弱まったり、ジスキネジア(自分の意志とは関係なく動く不随意運動など)が現れることがあるため、1つの薬だけを使うよりは、2~3種類の異なる効果の薬を合わせて治療し、それぞれの効果や副作用を調整していきます。
 
病状に合わせて適切な治療を行うためにも、定期的に診察を受け、相談することが必須となります。
 
ドーパミンへの異なる効果の薬として、増やすだけでなく、受け取りやすくする薬や放出を促進する薬、分解を阻害する薬などがあり、これらを補助薬として使用します。
 
 

リハビリテーション

パーキンソン病の症状のため、やる気がなくなったり、身体が動きにくくなったりするのですが、症状の進行だけではなく、廃用性の要素として、さらに身体機能が低下してしまうことがあります。積極的に外出したり、日常生活の中でもできる限り自分のことを行うようにして、運動量の低下を防ぎましょう。
 
また、毎日の散歩やストレッチなどを行うことで運動機能の低下を防ぎ、体力を向上させます。
運動訓練は、主治医や理学療法士と相談し、状態にあったものを、週3回以上・1回あたり20~30分行うことが望ましいのですが、決して無理はせず、適度な運動、快適な温度での運動や水分補給にも意識し、けがをしないように注意して行いましょう。
 
 

手術治療

すべての人を対象としておらず、完治を目指して行うものではありません。薬物治療に加えて、症状の改善を目指すために行われます。定位脳手術や深部脳刺激法などの外科的治療方法がありますが、症状と部位に合わせて適応できる治療が選択されます。
 
 

パーキンソン症候群

 
パーキンソン病と同じような症状が現れる疾患があり、それらはパーキンソン症候群と総称されています。パーキンソン症候群には、明確な原因があるものと、原因がよくわからないものの2種類があります。前者でいえば、脳血管に問題がある脳血管障害性、薬剤の服用により生じる薬物性があります。後者では、レビー小体型痴呆、線条体黒質変性症、進行性核上性麻痺、ジャイ・トレージャー症候群があります。
 
正しい診断を受けることが適切な治療を受けることに繋がります。神経内科専門医を受診し、実際には何の病気なのかを明確にする必要があります。そのため、必要に応じて、CTスキャン、MRI検査等の画像による診断が行われる場合があります。
 
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若年性パーキンソン病の著名人

さて、ここからは若年性パーキンソン病にフォーカスをして説明していきましょう。
前述したように、余り馴染みがないかもしれない若年性パーキンソン病という病気ですが、著名人で闘病している方もいらっしゃいます。
 
最近では、2015年に、ダイヤモンドダイニングの松村厚久社長が、30代から若年性パーキンソン病に苦しんでいる事を公表しています。
 
また、Back to the futureで有名な俳優のマイケル・J・フォックスさんも、30歳位で、若年性パーキンソン病にかかっており、その事実を公表しています。
 
 

若年性パーキンソン病の特徴

 
日本のパーキンソン病患者の内、若年性パーキンソン病は5~10%を占めます(3)。
 
若年性パーキンソン病には、高齢者が発症するパーキンソン病とは少し異なる、以下のような特徴が見られます(3)(4)。
 

  • ・進行がとてもゆっくり
  • ・薬の効果が長く続く
  • ・表情が乏しい、動作がゆっくり(寡動)という症状が主で、手足の震えは少ない
  • ・姿勢反射障害はあっても軽度で、転倒を引き起こすほどのものではない
  • ・薬は睡眠が深ければよく効き、浅いと効きにくい(睡眠効果)
  • ・便秘などの自律神経症状や、うつ、摂食障害※など精神症状が多く見られる
  • ・認知障害はあまり併発しない

 
※編集部注:摂食障害の詳細については「摂食障害とはどんな病気? 拒食と過食、症状など詳しく解説」をご参照ください。
 
 

若年性パーキンソン病の初期症状

上述のような特徴をもつ若年性パーキンソン病ですが、その初期症状はどのようなものなのでしょうか?
 
若年性パーキンソン病の初期症状としては、何れか片方の手や足の震えや歩行の困難さ、においの感覚が鈍化する嗅覚障害などがみられます。。
 
 

若年性パーキンソン病の原因

 
前述したようにパーキンソン病全般については、ドーパミンニューロンの減少に加齢や生活環境、ストレスなどさまざまな要因が関与していると考えられていますが、若年性パーキンソン病の場合には、遺伝的な要因が強く関わっていることが明らかになっています(5)。
 
というのも、若年性パーキンソン病の患者は、多くの場合その血縁者もパーキンソン病を発症していることが分かったのです。このことから、若年性パーキンソン病は家族性パーキンソン病とも呼ばれます。
 
 

若年性パーキンソン病の原因遺伝子

発見された若年性パーキンソン病の原因遺伝子の中に、ミトコンドリアの品質管理に影響を与えるものがあります。
 
ミトコンドリアは体内で使われるエネルギーを生産する細胞小器官です。しかしこのミトコンドリアは古くなると、その機能が衰えて異常をきたすようになるので、そうなったミトコンドリアは分解されて排斥されます。これがミトコンドリアの品質管理です。
 
若年性パーキンソン病の原因遺伝子は、普段は古くなったミトコンドリアを発見して品質管理を行う働きを持っています。しかし、この遺伝子が何らかの原因によって異常が起きてその働きが抑制されると、ミトコンドリアの品質管理が正常に行われなくなり、神経細胞の死につながることで若年性パーキンソン病の症状が現れると考えられています。
 
しかし、若年性パーキンソン病を引き起こす遺伝子はまだすべてが解明されていないため、この疾患の根本的な治療方法もしっかり定まっていません。
 
※編集部注:DNAのチェックについて詳しく説明した「DNAチェック 遺伝子 検査の内容」も参考にしてください。
 
 

若年性パーキンソン病の治療法

 
若年性パーキンソン病の治療には、薬物療法、手術、リハビリテーション、生活習慣の改善などが挙げられます。
 
 

薬物療法

若年性パーキンソン病の薬物治療で現在主流となっている薬はドーパミンアゴニスト(ドーパミン受容体作動薬)という薬です。この薬はドーパミンの働きを補う効果があります。
 
しかし若年性パーキンソン病の場合、高齢者のパーキンソン病と違い薬の効果が長く続くので、L-ドーパ(レボドバ製剤)という薬が使われることもあります。この薬は服用するタイミングによって効果の継続時間や程度が異なるため、服用時には、飲む薬の量やタイミング等調整が必要です。
 

薬物療法の課題

長年服用を継続すると、薬の効果のある期間と切れている期間での体調の相違がおおきくなるウェアリングオフ現象が顕著となるため注意が必要です。また薬が効いているときに、ドーパミン分泌が過剰になり、ジスキネジアという、不随意運動が起こることがあり、前述したような服用時の細かい調整を、主治医と相談して行う必要があります。
 

手術

手術による脳深部刺激療法(DBS)という方法がとられることもあります。頭蓋骨を開いて脳に電極を埋め込むという方法で、これによって症状の進行が止まることはありませんが、うまくいけば症状がかなり軽減される人もいます。
 
 

リハビリテーション

適度な運動を行うことにより症状の進行を防ぐ方法です。太極拳やヨガ、ストレッチ、ダンスなどで定期的に体を動かすようにします。
 
 

生活習慣の改善

食事の内容や就活習慣により若年性パーキンソン病に対する薬の効きが変わることがあるため、規則正しい生活習慣を心掛けるようにします。
食事については、ビタミンB6、タンパク質を多く含有するものを摂取すると、薬の効果が減少すると言われています。
また、胃腸薬の服用も、薬の効果に影響を与えます。
また、若年性パーキンソン病の場合、薬の効き目に睡眠効果が影響しやすいため、しっかりと眠れる環境を整えることが大切です。
 
※編集部注:生活習慣を改善する上で、以下の3記事もご参考にしてください。
 
「高血圧の症状 :高血圧には自覚症状がない場合も…症状を知り早期発見を」
 
「血圧の正常値 って、どのくらいなの?血圧正常値を示す基準は?」
 
「血糖値の正常値 とはどれくらい? 血糖値が“高い” “低い”でどんな影響が?」
 
 

若年性パーキンソン病と社会福祉制度

 
パーキンソン病では、ある程度の症状の重さが条件でありますが、重症度に応じて特定疾患治療研究による医療費助成や障害年金等の社会福祉制度からの助成が受けられます。特に働き盛りで発症する若年性パーキンソン病においては、受給による経済面での負担軽減の意味は、大きいと思われます。
重症度の分類方法としては、次の2つがあります。
 
 

分類方法

医療費の公費負担がうけられるのは、ホーエン&ヤール重症度が3度以上、かつ、生活機能障害度Ⅱ度以上となります。
 

(1)ホーエン&ヤール重症度による分類
1度:一側性パーキンソニズム(※)のため、身体の左・右どちらかに軽い症状が現れる。
2度:両側性パーキンソニズムのため、身体の両側に症状が現れる。姿勢障害なし。
3度:軽~中等度パーキンソニズム。姿勢反射障害があり、身体のバランスが悪くなる。
4度:高度障害があるが、起立・歩行はなんとか可能。
5度:車いす、またはほぼ寝たきりの生活。

 
※パーキンソニズムって?
振戦(ふるえ)、筋固縮、無動、姿勢障害の症状のなかで、いくつかの症状を示している状態です。外傷、腫瘍、脳血管障害、あるいは薬剤の副作用・中毒などによって、二次的におこることもあります。
 

(2)生活機能障害度による分類
Ⅰ度:日常生活に介助は要さない
Ⅱ度:日常生活に介助を要する
Ⅲ度:日常生活に全面的な介助を要する

 
これらは、病気の進行具合をみるためのものではありません。つまり、必ずしも1度から5度まで順番に進んでいくというわけではなく、最初から3度の症状が現れることもあります。少しでも重症度が重くならないように、治療、食事、運動、睡眠などをしっかり整え、積極的に体調を管理していくことが大切です。
 
 

若年性パーキンソン病を生きるために

 
若年性パーキンソン病は精神疾患などと誤診されやすく、またちょうど働き盛りの年代で発症するので、仕事や子育てで大変な苦労やストレスを感じやすい病気です。
 
また、若年性パーキンソン病の多くは、遺伝性であること、薬の服用が必要な為、結婚、妊娠、出産については、深く思い悩む人もいるでしょう。
 
しかしきちんと診断を受け、治療を続けることで症状を軽減することができますし、原因遺伝子は、劣性ですので、子供が発症する可能性は低いと考えられます。勿論、楽観出来る事ではありませんが、重要なのは、過度に悲観的にならないようにすることでしょう。
 
またもし身近に若年性パーキンソン病の患者さんがいる場合は、こころが不安定になっていることが多いので周りの人がサポートしてあげる必要があります。その場合には若年性パーキンソン病について正しい知識を持っている事がとても重要です。
 
 
【参考文献】
(1)パーキンソン病サポートネット
(2)難病情報センター
(3)いつも空が見えるから
(4)脳の病気チェックドットネット
(5)パーキンソン病ナレッジ
(6)立教大学
 
 
<執筆者プロフィール>
須賀 香穂里(すが かほり)
神奈川大学人間科学部・人間科学科所属。社会心理学や人間関係をテーマとした執筆活動を行っている
 
<監修者プロフィール>
株式会社とらうべ:医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など、専門家による、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
 
 

編集部オススメリンク

 
関連した情報として以下のようなものがありますので、ご参考にしてください。
 
一般社団法人日本神経学会サイトの中でパーキンソン病について説明したページであるパーキンソン病治療ガイドライン2011|日本神経学会治療ガイドライン|ガイドライン|日本神経学会は、パーキンソン病について分かりやすくまとまっています。
 
パーキンソン病の初期症状 :初期症状を把握し適切な対処を
 
「統合失調症の症状はどういうもの? 具体的な内容と対策まで」
 
「生理前のイライラに効く薬 って?そもそも、生理前にイライラするのはなぜ?」
 
神経内科の医師がパーキンソン病について説明した動画
 

※なお記事中の語句に張られたリンクをクリックすると、当該語句について詳しく説明した当サイト内もしくは外部サイトの記事へ移動しますので、ご活用いただければ幸いです。